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執筆者の写真縄文屋根

屋根の上の不思議

屋根の上の不思議

どうして、茅葺き屋根には植物が育つのか。

10年以上も屋根に登っていると、当たり前のようになって、疑問にも思わなくなりかけていたこと。

よくよく考えたら、めちゃくちゃ不思議なことが起こっている。

まず、勝手に苔がむす。 彼らは一体どこから来たのか? 早ければ5年、遅くとも20年以内には現れる。

それから、タラの芽や松、ブルーベリーなんかの植物が生えてくる。 鳥が運んでくるのか? それとも風に乗ってくるのか?

そしてススキも生えてくる。 そりゃ、かやぶきはススキで葺かれてるんだから、当然でしょ?と思いきや、ススキの穂からススキを育てたり増やすというのは、実は大変難しく、人意的にやる場合は根分け(カブ分け)が定石だ。

昨日、屋根の上から笹が生えてきているのを見た。 すぐ近くの地面には、その親らしき笹が生えていた。 しかし、笹は根で繁殖するはずではないか? 種もあるとはいうけど、20年だか60年に1度花が咲いた後に種が出来るとすると、、。

いったい、屋根の上で何が起きているのか。

簡単にいえば、おそらく、かやぶき屋根は山に還ろうとしている。 しかも、もの凄いスピードで。

僕らは山を作っている。

木を見て森を見ず。

屋根ばかり見ていて気づかなかった、気づけなかったことに、最近ようやく気がついた。

山は、ひとつの生命体であって、 木は、その山の一部でしかない。

つまり、茅葺き屋根は大地と縁が切れているようでも、繋がっていてる、山の一部なんだ。

茅葺き屋根の家に暮らすということは、 その山の言わば地下空間、ナウシカの腐海の底に住むようなことなのかもしれない。

早く山に還る屋根という発想。 それは、長持ちする屋根を葺く術を知ることにも繋がる。

ただ循環を考えるのであれば、土に還るのは早い方がいい?という価値観さえあるかもしれない。

そんな職人らしからぬことを考えてしまうのは、茅葺き屋根の家に、暮らすようになったせいか。

屋根を見て里山を見ず。

まだまだ深い。 屋根の上の世界は、まだまだ深い。


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