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執筆者の写真縄文屋根

かやぶきに暮らすとは。

茅葺きに暮らすとはー

一度住んでみないと、茅葺きの本質はわからないし、伝えられない。 そう思って、古民家のトタンを剥がして暮らす茅葺きの住人になって5年目。 (完全にトタンを剥がしてからは、まだ1年。)

改めて、茅葺きに住むとはどういうことか。 このタイミングで、一度言語化してみる。

正直なところ、 いざ住み始めると、屋根を直してばかりなどいられない。 水回り、トイレ、お風呂、キッチンから、居間も寝室も、結局全部屋床を剥がしてやり直した。(まだ現在進行形だ。)屋根に費やした時間なんて、1〜2割くらいかもしれない。

自分でやってみて思うのは、費用や手間、快適性など合理的に考えれば、古民家なんて直すより、新築にした方が絶対にいい。 茅葺きだって、維持していくことを考えると、大変なことに違いはない。

しかし、その大変なことや、手間をかける暮らしに価値を見い出すことが出来る人、そして、侘び寂びの心を大事に生きている人には、ぜひ住んでみて欲しいと思う。

茅葺き屋根の古民家に暮らすと、「家を育てる」という感覚が芽生える。 そもそも完成という概念はなくて、古くなることにもネガティブな印象はない。長く暮らしていけるように、育ててながら暮らしてく。 屋根に苔が生えたら、美しさを感じ、屋根から木や花が咲けば、愛おしくさえ思う。

完成やゴールを目指す現代社会とは違う、淡々と、でも小さな喜びがたくさんある日常。 それが茅葺きに暮らすということかもしれない。

茅葺きと音楽はよく似ている。 生きていくのに、絶対必要ではないかもしれないけれど、空気と同じように当たり前にあって、時に心の琴線に響く。 そういうことに、価値を見いだしたり、じっくり時を味わうことが出来る人々にとって、茅葺きに暮らすことは、とても自然なことなように思う。

実際に、今まで出会った、茅葺きに住んでる人たちの顔ぶれを思い返してみると、 陶芸家、絵描き、竹細工作家、彫刻家、音楽家…。 作家や芸術家、アーティスト率はやっぱり高いのはたまたまか⁈

結いという文化もほとんど消滅し、行くところまで辿り着いた感もある現代において、 茅葺きの暮らしは、侘び寂びのこころ、足るを知ること…。 たくさんの日本の心を教えてくれる。

まだまだ言葉足らずなことに歯痒さを感じつつ、実際に茅葺きに暮らしてみなければ分からなかった、たくさんの気付きが、芽吹きはじめた2022年の春。


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